米・麹・水と向き合い続けた、現場が語る玉乃光酒造の原点。
「酒造りの現場から見つめてきた、玉乃光の変わらない芯」- 監査役 前垣吉夫 -
玉乃光酒造株式会社 監査役
前垣 吉夫(1977年入社)
酒造りの現場から瓶詰め・製品化、製造部門まで長く支えてきた玉乃光の生き字引。 米・麹・水だけで造る純米の姿勢を守り、熟成酒にも現場目線の確かな言葉を寄せる。
前垣さんは、玉乃光にどのような立場で関わってこられたのでしょうか。
最初は酒造りの現場の、一番下の方から始まりました。
その後、平成元年頃からお酒がよく売れるようになって、瓶詰めなど製品化の責任者を10年ほど務めました。
それからまた酒造りの方に戻り、6年前までは製造部長として関わっていました。
和歌山時代の玉乃光もご存じなのですね。
はい。私が来た頃は、まだ和歌山でも酒を造っていました。
昭和の終わり頃までは本社も和歌山にありましたし、和歌山と伏見の両方で酒造りをしていました。
当時は、蔵人も親戚が多かったですね。
冬は酒造り、夏は瓶詰めなどの仕事をする。そういう流れの中でずっと関わってきました。
酒造りの世界に入られたきっかけは何だったのでしょうか。
出身の但馬の方は、冬になると雪に覆われて、働く場所も限られていました。
だから冬は出稼ぎに出る人が多かったんです。
親戚もみんな酒蔵に出ていましたので、私も自然とこの仕事に関わるようになりました。
長く関わってこられた中で、特に大変だったことはありますか。
お酒がどんどん売れて、商品の種類も増えていった時期ですね。瓶詰めの機械や設備が古くなっていたので、それを入れ替える必要がありました。
ただ、出荷を止めるわけにはいきません。動かしながら、順番に設備を更新していく。それが3年ほど続きましたが、その時期が一番大変だったと思います。
玉乃光が変えずに守ってきたものは何だと思われますか。
やはり、醸造アルコールを入れないことです。米と麹と水だけで造る。これは、会長もそうですし、昔から大切にしてきたことです。
今は他のメーカーさんも同じようなことをされていますから、それだけでは差別化が難しい時代になっています。だからこそ、これからは商品としてどう伝えていくかが大事だと思います。
熟成酒ブランド「RING」の話を聞いたときは、どう感じましたか。
いい考えだと思いました。できたお酒をすぐに売るのではなく、時間をかけて付加価値をつける。純米吟醸を長期貯蔵すると、味がまろやかになります。常温ではなく、冷蔵に近い暗い場所で置いておくと、コクが出て、でも爽やかさも残る。玉乃光には貯蔵できる場所もありますし、続けていけばいいお酒になると思いました。
熟成で一番大切なことは何でしょうか。
温度です。暗いところで、温度管理をきちんとすること。明るい場所では色がつきやすいですし、温度が高いと変化が強く出すぎます
低温で、時間をかけて置いておく。簡単なことではありませんが、それが大事だと思います。
お客様には、RINGをどのように楽しんでほしいですか。
熟成は、自分の歴史みたいなものだと思います。1年1年、味が積み重なっていく。
ただ置いておいて5年、10年経った酒と、手間をかけて造って、きちんと管理してきた酒はまったく違います。飲んだときに「やっぱり玉乃光の酒はおいしいな」と思っていただけたら嬉しいですね。
これからの玉乃光に望むことはありますか。
昔の考えがすべていいとは言いません。
ただ、味のある、替えのきかない、心のこもったお酒を造り続けていってほしいと思います。