350年の歴史を守りながら、玉乃光を未来へつなぐために。
「食事に寄り添う酒を、次の時代へ」- 代表取締役会長 丸山 恒生 –
玉乃光酒造株式会社 代表取締役会長
丸山 恒生
商社・繊維業界で培った経営とブランド視点を生かし、2008年に玉乃光酒造へ。 純米酒の価値と食中酒文化を守りながら、老舗蔵の次代への橋渡しを担う。
まずは、丸山会長と玉乃光酒造との関わりについて教えてください。
大学を卒業してからは商社に勤めて、その後は父の事業にも関わっていました。
酒造りとはまったく違う世界でしたね。玉乃光には、2007年頃から役員会などに顔を出すようになりました。
2009年頃だったと思いますが、当時の社長や会長から「次をやってくれないか」と声をかけていただきました。
もちろん迷いはありました。別の会社の社長もしていましたし、同時に務められるのかという不安もありました。
ただ、次の世代へつなぐ橋渡しも含めてお願いしたいということでしたので、思い切って引き受けることにしました。
酒造業は、それまで関わってこられた業界とはまったく違いますよね。
そうですね。商社では海外との輸入機械の仕事をしていましたし、その後は繊維やアパレル関係の事業に携わっていました。
飲食や酒造りに直接関係するような仕事はしていませんでしたので、知らないことばかりでした。
最初は本当に勉強ばかりで、すぐに実務に入るというより、まずは理解するところからでした。
玉乃光に入られて、まず何を大切にしようと思われましたか。
入ってみて感じたのは、歴史ある会社ではあるけれど、組織としてはまだ個人の力に頼る部分が大きいということでした。
上の人が言ったことがすべてになってしまうような空気もありました。
玉乃光は名前も知られている酒蔵です。
だからこそ、ただのワンマン経営ではなく、きちんと企業として成り立つ形にしていかなければいけない。そこは強く感じていました。
玉乃光の歴史の中で、大きな転機だったと感じることはありますか。
いくつもあります。和歌山から京都・伏見へ出てきたことも大きな転機ですし、その後の純米酒への転換も大きかったと思います。
かつては桶売りの時代もありましたが、そこから脱却して、自分たちのブランドとして、自分たちで売っていく道を選んだ。
純米酒を掲げて進んできたことは、玉乃光にとって非常に大きな意味がありました。
玉乃光の酒造りで、今も大切にしていることは何でしょうか。
基本にあるのは、食事と一緒に楽しめる酒であることです。今は香りが華やかで、お酒だけで楽しむタイプも多いですが、玉乃光はやはり食中酒です。
おいしい料理と一緒に飲んだときに、自然に寄り添う。料理を邪魔せず、食卓の時間を豊かにする。そこが玉乃光の真ん中にある考え方だと思っています。
今回の熟成酒ブランド「RING」という名前については、どのように受け止めておられますか。
「玉乃光」という名前は、本当にいい名前だと思っています。玉は丸であり、光でもある。そこには円や輝きのイメージがあります。
以前、ブランドの考え方を相談していたときに「ダイヤモンドリング」という言葉が出てきました。ダイヤモンドリングとは、日食の終わりに一点の光が輝く現象です。暗い世界から、次の光が見える瞬間。そのイメージを聞いたときに、これは玉乃光に合うと思いました。
円、光、未来、夢。そういった意味を持つものとして、RINGという名前にも通じるものがあると感じています。
熟成酒という新しい取り組みを聞いたときは、どう感じられましたか。
日本酒は、もともと新しいものがありがたがられる世界でした。古いものはよくない、という見方もありました。
でも世界を見れば、ワインなどは時間を重ねることで価値が生まれます。
熟成酒で伝えたいのは、味わいだけではありません。
たとえば10年熟成のお酒を飲むときに、「10年前の自分は何をしていただろう」と思い出していただける。
お酒の時間と、自分の時間を重ねながら飲んでいただけることに価値があると思っています。
RINGを通して、玉乃光の未来をどのように描いていきたいですか。
熟成という価値は、日本よりも海外の方が受け入れられやすい面もあると思います。
ただ、今は冷蔵や貯蔵の技術で、きれいな熟成をコントロールできる時代です。
強い個性だけではなく、飲みやすく、きちんとおいしい熟成酒。
食事とともに楽しめる熟成酒を、玉乃光らしく育てていきたいと思っています。